インプラントを埋入しようというとき、その部位の歯槽骨がインプラントの長さや幅に合うものなのかどうかを確かめる必要があります。
インプラントの長さと直径より骨が高く、骨幅が広くなければならないのですが、インプラントの直径に対して骨幅が狭いといったケースもときおり見受けられます。このような場合は、通常の術式のインプラント手術ができません。まず、歯槽骨の骨幅をインプラントの直径よりも大きくする必要が生じるのです。
こうしたケースで用いられる方法が、「リッジエキスパンジョン法」もしくは「スプリットクレスト法」です。
リッジエキスパンジョン法は歯槽堤拡大術ともいい、器具を使って歯槽骨を段階的に押し拡げ、インプラントを埋入するのに十分な骨幅を確保する方法です。
一方のスプリットクレスト法は歯槽堤分割術とも呼ばれるもので、特殊な器具を用いて歯槽骨を二分割し、骨の合間にできた孔にインプラントを埋入する方法です。この術式では、インプラントと骨の間にできたスペースに骨補填材を入れて、骨の再生を促します。
〈スプリットクレスト法〉
1.インプラントを埋入する部位の歯槽骨頭頂部を骨ノミを使って二分割する
2.骨ノミのサイズを変えながら少しずつ骨を押し拡げ、インプラントを埋入するための孔を作っていく
3,インプラントを埋入したあと、インプラントと骨の間にあるスペ-スに骨補填材を満たす
4.歯肉を結合し、骨が安定するのを待つ
5.骨の安定を確認したのち、インプラント手術を行う
インプラントを埋入できるほど歯槽骨の高さがないときに十分な高さを確保するための方法
何らかの理由で歯が抜けてから時間がたっている場合や、歯周病などが原因で骨が酸くなっている場合、インプラントを埋入するために必要な高さがなくなっていることがあります。こうしたケースでは、インプラントを埋入するのに十分な骨を作り、増やす必要があります。
「ソケットリフト法」「サイナスリフト法」は、上あごの奥歯部分の骨にある空洞(上顎洞)を使って骨を作り、インプラントを埋入するのに十分な高さを確保するための方法です。インプラントが上顎洞を突き抜けてしまわないよう、上顎洞を上に持ち上げ、骨を作りながら、インプラントを埋め込んでいきます。
ソケットリフト法では、上顎洞の下のほうから骨補填材(骨生成材)を挿入し、専用の器具を使って上顎洞底を押し上げていきます。十分に上顎洞底が持ち上がった段階で、インプラントを埋入します。押し上げられた部分は4ヶ月から5ヶ月もたてば十分な骨ができるので、身体への負担が少なく、一般的によく用いられる方法です。
一方のサイナスリフト法は、骨の量が非常に少ない方向けの処置です。上顎洞の横の歯茎をめくって上顎洞を露出させ、直接上に持ち上げ、空いたスペースに骨補填材を挿入します。半年もすれば十分な骨ができますが、ソケットリフトに比べると、身体にかかる負担が大きくなります。
〈ソケットリフト法〉
- インプラントを埋入するための孔を開ける
- 上顎洞の底から骨補填材を挿入する
- 骨補填材を介して、専用の器具を使って上顎洞を押し上げる
- 十分に骨が持ち上がり、骨ができあがったのを確認して、インプラント手術を行う
〈サイナスリフト法〉
- 上顎洞横の歯茎を大きくめくり、歯茎の横に1㎝程度の孔を開けて上顎洞を持ち上げる
- 空いたスケースに骨補填材を挿入する
- 半年たって自家骨に置き換わったのを確認してからインプラント手術を行う